じんじろうの書きつけ

転職、就職、採用、育成、制度、社員サポートなど、人事領域で、プロだからこその情報を共有する役立ちサイトです。

【どうする?突然の異動辞令】とっさに困らない 普段から考えておきたい3つのこと

また異動の季節がきた。

最近は12月決算の会社も増えたので、この秋から冬の時期は、つぎの1月からの来期組織が決まり、社員への内示にはいっているタイミングではないだろうか。

 

 会社員だけでなく、公務員も含めた「組織人」にとって、突然訪れて、それでいて避けて通れないもの。そう、異動辞令だ。

 

 多くの場合、異動の伝達は、上長に呼ばれ面談が設定される。そこで初めて、そして事務的に「通知」されることが一般的だ。それは会社の決定事項であり、相談したりすり合わせたりするものではない、命令である。

 

 会社は事業戦略に従って組織人事を決め、それに従って異動が通知される。そこには会社から社員へ、という一方向の矢印しかなく、逆にはならない。そのため、私たち組織人は、その時が来るのに備えて、どう対応するか準備をしておく必要がある。それがあなたのキャリアや、大げさに言えば人生だって左右しかねないからだ。

 

■うかつにYesとは言わない

 もし、あなたへの辞令があなたのキャリアやライフプランを大きく変えるもので、予想外であったとき、相談したい相手や確認したいことがあったら、上司とのその面談の中でうかつに「Yes」とは言わないことだ。上司は内諾を取り付けるつもりでいるので、あなたの「Yes」を受けて、面談後には、すぐに異動先にそれを伝えてしまうだろう。

 

 そうすると、あとで「やっぱり異動は難しいです・・」とは言いにくく、覆せなくなる。また、そうしたゴタゴタを経て結局異動を受け入れることになった場合、異動先からは「即決しなかった」という印象になり、最初からつまずくことになる。もし迷いがあるのなら、うかつには「Yes」や「行けそうだ」と返答しないほうがよい。

 

 最近は、転居を伴う異動や、大きくキャリアを変えることを、突然本人に伝えてその場で受諾を迫ることをリスクと考える会社も増えてきた。社命とはいえ、強引に進めることが会社へのエンゲージメントを下げることになるし、場合によっては離職リスクを高めるからだ。

 

 そのため、事前に転居可否や、教育・介護・看護・通院などの家庭の事情、望むキャリアの方向性などを把握したうえでマッチングをおこなうことも多い。

 

 しかし、すべてのすり合わせを会社と本人との間で事前におこなうのは困難で、また本人が望むキャリアと、会社が可能性を感じている開発キャリアとの間にギャップがある場合もある。予期せぬ異動から、新しい資質が見いだされて、花開くケースも往々にしてあるからだ。

 

 他方で、異動の打診を受けたとき、行ってもいいと本当に思うのなら、即断で「行かせてほしい」と言ったほうがよい。原則として社命なので、よほどのことがなければ断れないのだが、「行かない(=最悪退職することになっても受諾はしない)」という選択肢がまったくないのであれば、即決・快諾したほうが異動先にも会社にも心象が良いからだ。最終的に行くのであれば、あまりもったいつけないほうがよく、異動先にも伝わるように意欲を示しておくのが賢明だ。

 

 

■異動先は自分でリサーチしてみる

 もし、時間的に許されるのであれば、異動先を提示された後、可否を回答するまえに、自分で異動先の人をたどって業務内容や雰囲気などを水面下でリサーチしてみるとよい。封建的な組織の場合は、そうした動きが察知される可能性もあるため慎重さが求められるが、信頼のおける人がいれば、実際にそこで働いている人に聞ける話は大変参考になる。

 

 私自身、異動辞令を受けた後、異動先のメンバーに話を聞き、実はそのメンバーの退職が決まっていることを知ったことがあった。異動の打診のとき、上長からは、業務を一緒におこなうと説明されていたそのメンバーの退職後の穴を埋める異動だったのだ。退職日は異動予定の1週間後に迫り、一緒に業務はおろか、引き継ぎさえ十分に行われそうにないことがわかり、大いに不信感を覚えた。

 

 この例は極端でややブラックだが、結果的にその異動はなくなることとなった。日頃から社内の状況に通じるようにしておいたり、いざというときに情報を聞きだせる仲間を増やしておくことが大切な例といえる。

 

 

■切り札はとっておく

 異動辞令は社命だ。原則断れない。しかし、「退職」のカードは自身にあり、それをもって交渉することは、最後の手段ではあるが可能だ。

 

「異動を断ることは、退職することである」としている会社もまだ多い。そうしなければ社命での異動がうまく回っていかないからだ。個人の事情で拒否できてしまえば、事業戦略を支える人員配置ができなくなってしまう。社員の個別事情をなるべく排除して、強制力を保とうとするのはそのためだ。

 

 しかし、評価が高い社員の場合、異動しないことで退職されては困るので、再考されることも考えられる。会社が把握していない異動できない家庭の事情や、状況が許さない事実がわかったとき、優秀でこれからも貢献してほしい社員ほど、交渉できる余地は出てくるだろう。異動時期を考慮したり、異動先での期限を設定したりなど、個別の条件設定はあり得る。

 

 評価が高くない社員はどうだろう。これは残念ながら異動を蹴るということは、退職を覚悟することになる。せちがらいが、会社が必要と思う人財であり続けることが、自身のキャリアを創り、家族と生活を守る最短ルートであるのだ。

 

 見方を少し変えれば、異動が晴天の霹靂であったとしても、まずはあれこれ損得を考えず受け入れてみて、与えられたところで咲いてみようという考え方もある。先に触れたように、大きく成長するきっかけは、環境や上司、仕事を大きく振ったときでもあるからだ。

 

「キャリアは先にはなく、振り返ったときにできているものだ」とも言う。自分の強みは自分よりも会社や上司が知っていることもある。いつくるとも知れない異動辞令に心構えはしつつ、価値を高め認めてもらう努力は怠らないようにしたい。